17-その他の死後存続関連研究

このほかにも、二〇世紀後半に「死後問題」「他界問題」を世に問いかけることになった出来事がある。とりあえずここでは、キューブラー=ロス、シャーリー・マクレーン、ロバート・モンローについて簡単に触れておく。
エリザベス・キューブラー=ロス(一九二六~二〇〇四)は、日本でも非常に著名な「臨死医療」の先駆者である。スイスに生まれ、苦学して米国で医者になるが、近代医療体制が「死を待つ患者」を放置していることに疑義を抱き、精神医学博士を取得、臨死患者の「精神的ケア」活動に邁進した。一九六九年に『死の瞬間』[キューブラー=ロス、一九九八年]を刊行すると、同書はベストセラーとなり、「ターミナル・ケア」「ホスピス」運動の理論的支柱として一躍脚光を浴びた。特にそこで主張された「死の受容のプロセス」(否認・怒り・取引・抑鬱・受容)は、医療関係者にも大きな影響を与えた。この動きは国際的に拡がり、以後ホスピス運動がいたるところで展開されることになった。日本でも『死の瞬間』は一九七一年に翻訳され、大きな話題を呼んだ。著名な医師を始め、多くの知識人がキューブラー=ロスの名を挙げ、ホスピス運動の旗手として賞賛した。
この時点でのキューブラー=ロスは、「死に到るプロセス」の研究をしていたものの、「死の後」についてはほとんど関心を持っていなかった。ところが、刊行直後に一人のクライエントが「臨死体験」を報告し、さらにその一年後には「霊」として出現したことで、彼女は急速に「死後問題」探究へと傾斜していく。そして、霊媒との交流、自身の体外離脱体験などを経て、一九七三年には『死・成長の最終段階』[キューブラー=ロス、二〇〇一年]を刊行、「死後存続」を絶対的な確信をもって受け入れるようになった。自伝『人生は廻る輪のように』[キューブラー=ロス、一九九八年]はその経緯を詳細に語っている。一方、彼女のこうした「変節」に反感を持つ人々もいたようで、新版訳本の「訳者あとがき」には次のような記述がある。
《キューブラー・ロスが死後の生や輪廻転生について熱弁をふるうようになってから、そうしたものを信じる多くの人びとの熱狂的な支持を得たと同時に、キューブラー・ロスは宗教家あるいは神秘主義者になってしまったとして、彼女のもとを去っていった人、彼女の著書を読まなくなってしまった人も多いのである。》
こうした反応はやむを得ないものだが、一九七三年という段階(臨死体験がブームになる以前)に死後存続説を主張したことが、先駆的な意味を持ったことは疑いない。

シャーリー・マクレーンは、一九三四年生まれのアメリカの女優で、一九五五年にヒッチコック作品でデビューして以来、人気を博していたが、一九八三年に自伝『アウト・オン・ア・リム』[マクレーン、一九八六年]を発表、ベスト・セラーとなった(同年にアカデミー賞主演女優賞も受賞している)。
同書は個人的な体験記ではあるが、中心主題である生まれ変わり・前世問題のほか、霊との交信、指導霊の存在などスピリチュアリズム的主題もちりばめられている(エマソンやソローへの言及はあるが面白いことにスピリチュアリズムにはまったく触れられていない)。著名な女優がそういった主題を真正面から語ったということは社会的に注目され、テレビ映画化されるなど、大衆的なブームとなった。
日本では一九八六年に翻訳が出版され、多くの読者を得た。また彼女は前世を日本で過ごしたことがあるということから親日家となり、しばしば来日し日本の「精神世界ブーム」の隆盛にも多大な役割を果たした。

ロバート・モンロー(一九一五~一九九五)は、米国インディアナ生まれで、ラジオ番組制作や放送音楽の作曲、さらに放送局の経営などで成功を収める一方、パターン音が人間の意識にもたらす影響を自らを実験台にして研究していた。一九五八年の実験中、彼は突然「体外離脱体験(out of body experience=OBE)を体験、以後、意識的にそれを起こせるようになった。一九七一年にはその体験を綴った『体外への旅』[モンロー、一九八五年]を刊行、一躍注目の的となった。さらに一九七四年にはモンロー研究所を設立、「ヘミシンク」という特殊な音を聞くことで体外離脱を可能にさせるプログラムを開発し、世界中に広めた。一九八五年には『魂の体外旅行』、一九九四年には『究極の旅』を刊行し、離脱した魂が訪れる「非物質的世界=霊界」の様子や、人間の生の意味といったスピリチュアリズム的な主題について論じた。なお、キューブラー=ロスもモンローのもとで体外離脱体験を経験している。
体外離脱体験=脱魂は、後に改めて述べるが、霊魂実在(死後存続)の証拠や霊界情報としては問題がある部分もある。しかし、憑霊も脱魂から始まること、微弱な脱魂(いわゆる「金縛り」)において一般人が霊的存在と接触する体験が多いことなど、現界と霊界の交渉としては非常に大きな意味を持つものである。それを意図的に起こせるのであれば、霊的問題の探究には大いに意義があるのかもしれない。現在も、ヘミシングのプログラムCDを購入したり、モンロー研究所を訪ねたりして、体外離脱に挑戦している人は多いようである。